解答
解説
第1問
問1:正解1
<解説>
オキソニウムイオン H₃O⁺ は、水分子にプロトン(陽子)1個が付加して生じるイオンで、水素原子3個と酸素原子1個から成り立っています。電荷がプラス1なので、酸素原子と水素原子のもともとの電子の合計から1個減った数の電子しか持ちません。酸素はもともと電子を8個、水素はそれぞれ1個ずつなので合計11個ですが、+1の電荷を持つことで実際の電子数は10個になります。そのため、電子数が11個あるという記述は誤りです。また、非共有電子対が1組あり、水素3個と酸素原子の結合は共有結合で、空間構造は三角錐形に近い形になります。
問2:正解3
<解説>
ヘリウム He、ネオン Ne、アルゴン Ar のような希ガス元素は、価電子殻が満たされた安定な電子配置をとります。イオン化エネルギー(電子を1個取り去るために必要なエネルギー)は原子番号が小さいほど一般的に大きく、ヘリウムは極めて大きい値を持ちます。したがって、「ヘリウムよりネオンが、ネオンよりアルゴンがイオン化エネルギーの値で大きい」という順序は事実と反します。実際には He が最も大きく、次に Ne、さらに Ar の順で小さくなっていきます。
問3:正解2
<解説>
臭素(Br)には質量数が異なる同位体 ⁷⁹Br と ⁸¹Br があり、それぞれ存在比がほぼ半々程度です。同位体は中性子数が異なるだけで、陽子数(原子番号)は同じなため、化学的性質はほとんど変わりません。そのため、「同位体である ⁷⁹Br と ⁸¹Br は化学的性質が大きく異なる」という主張は誤りです。中性子数の違いによる質量の違いは、物理的性質(例えば密度や拡散速度など)に若干の影響を与えますが、化学反応性は同じと考えられます。
問4:正解4
<解説>
洗剤の洗浄作用は、界面活性剤の分子が疎水性(油になじみやすい部分)と親水性(水になじみやすい部分)を併せ持つために、油汚れを水の中へ取り込むはたらきが大きな要因になります。洗濯や食器洗いなどで用いる際には、水中での界面活性剤の濃度や水の硬度なども考慮されます。問題文の下線部のうち、洗剤の使用量を「極端に多くしても洗浄効果は高くならない」こと、あるいは「カルシウムイオンやマグネシウムイオンが多い硬水では洗浄力が低下する」ことなどはよく知られています。一方で、「環境への配慮」の視点などに関して、記述の内容に誤りがある箇所を指摘する必要があります。洗浄成分がどのように作用するか、また洗剤の性質や水質との関係について正しく把握できているかを検討すると、特定の下線部が実際の仕組みとは異なる記述であることがわかります。
問5:正解4
<解説>
酸や塩基としてはたらく分子やイオンには、水素イオン(H⁺)を与える(酸の性質)あるいは受け取る(塩基の性質)という点が着目されます。炭酸イオンが水と平衡を作る場合や、アンモニアがプロトンを受け取ってアンモニウムイオンになる場合など、それぞれ酸・塩基としてふるまう種が見いだせます。一方、酢酸イオンや硫酸イオンなどは、どの部分がプロトン授受を担っているかを考える必要があります。与えられた反応式の中で、「下線を付した分子・イオン」がどのようなプロトンの授受をするかを確認すると、該当しないものが区別され、酸塩基としてはたらいているものが絞られます。結果的に、ウやエの反応などに注目すると、そこに酸や塩基の性質がはっきり確認できます。
問6:正解2
<解説>
濃度が同じように見えても、硝酸(HNO₃)と酢酸(CH₃COOH)では電離の程度が大きく異なります。強酸である硝酸は水中でほぼ完全に電離し、水溶液中にたくさんの水素イオンを生じます。一方、酢酸は弱酸なので電離度は低く、水溶液中の水素イオンの数は少なくなります。電離している酸の量が多ければ、その酸を中和するのに必要な水酸化ナトリウム溶液(NaOH)の量も多くなります。また、電離している水素イオンの多寡は溶液の pH(あるいは酸性度)にも影響します。問題文にある2種類の水溶液 A と B を比べたとき、電離度の違いから生じる「電離している酸の物質量」と「中和に必要な NaOH の体積」の関係を整理すると、ある組み合わせが最も筋道が通ります。
問7:正解3
<解説>
未知濃度の水酸化ナトリウム水溶液を、濃度がわかっている希硝酸と中和滴定することで、その水酸化ナトリウム水溶液の濃度を求めることができます。滴定では、ビュレットにセットした酸を、メスシリンダーやビーカーに入れた塩基に少しずつ加え、ちょうど中和が終わった点(中和点)を指示薬や pH の変化で確認します。希硝酸の体積と濃度がわかっていれば、水酸化ナトリウムに含まれる水酸化物イオンとの反応量をもとに計算して、濃度が求められます。酸のモル数と塩基のモル数の比を踏まえると、実際に求まる数値は、問題文の条件から「少し小さめの値」よりも「中程度の値」など一定の範囲に落ち着きます。その結果として、特定の値が導かれます。
問8:正解1
<解説>
酸化を助ける目的で用いられる物質は、反応相手を酸化させる性質を持っています。酸化とは、相手から電子を奪う(または相手の酸化数を上げる)プロセスです。例えば鉄板を亜鉛でめっきすると、亜鉛が先に酸化されることで鉄の酸化を防いだり、食品に生石灰を入れて加熱したりする例など、それぞれ狙いが違います。問題文で示された例を見比べると、「ある物質を加えることで、ほかの物質が酸化されやすくなる」あるいは「自身が先に酸化されることで目的の物質の酸化を防ぐ」などのしくみが確認できます。いくつかの選択肢の中で、本来の狙いが“酸化を助ける”ことに合致するものを探すと、特定の選択肢が該当します。
問9:正解5
<解説>
鉄鉱石に含まれる酸化鉄(III)(Fe₂O₃)から金属鉄(Fe)を取り出す際、炭素などの還元剤を使って酸素を取り除きます。鉄鉱石中の Fe₂O₃ の含有率がわかれば、理論上得られる鉄の質量を見積もることができます。問題文では、鉄鉱石1トンあたりの Fe₂O₃ の質量と、Fe₂O₃ から実際に生成する Fe の質量比を考慮します。具体的には、酸化物中の酸素の分だけ質量が減っていき、最終的に鉄だけが取り出されるというイメージです。含有率から求まる Fe₂O₃ の量と、そこから得られる鉄の量を比べると、ある値に落ち着きます。その数字は半端な値ではなく、大きめの整数に近い数値となるので、最終的に比較的大きめの値が妥当となります。
問10:正解2
<解説>
金属 A と金属 B をそれぞれ硫酸塩水溶液に浸した電池を考えると、両電解液の間を素焼き板などで仕切る形でイオンがやりとりされ、電子は外部回路を経由して移動します。金属 A と金属 B のうち、よりイオン化傾向が大きい金属は酸化され(電子を放出しやすい)、もう一方は還元される仕組みです。酸化された金属は自分の板が次第に溶け出していくため、その板の質量は減少していきます。また、電池反応において電子の授受は必ず物質量比で進むので、例えば金属 A が2モル反応した場合に放出される電子は、問題文にあるイオン1モルが受け取る電子の数との対応を見れば、電子の総数などを推定できます。そこで、ある選択肢に記された「電子が流れる量と反応物質のモル数の対応」が誤っているかどうかを検討すると、誤りを含む記述と正しい記述が区別できます。
第2問
問11:正解1
<解説>
エタノール(C₂H₅OH)の水溶液は、中性付近の性質を示すか、場合によってはわずかに酸性を示すことが多く、塩基性を示すわけではありません。したがって「水溶液は塩基性を示す」という記述は誤りです。一方、エタノールは燃焼すると二酸化炭素と水が生じることや、燃料や飲料、消毒薬として幅広く利用されていることは広く知られています。また、固体のエタノール(氷状)を得るには低温条件が必要ですが、その固体の密度は一般に液体より大きいことが知られています。
問12:正解4
<解説>
エタノール(実線a)と水(実線b)、そしてある濃度のエタノール水溶液(破線c)を同じ条件で加熱したときの温度変化を比較すると、エタノールは水よりも早く沸騰して蒸発が始まります。しかし、「エタノール50 gの方が水50 gより短時間で蒸発する」ことから「1gあたりの蒸発に要する熱量がエタノールの方が大きい」と結論づけるのは誤りです。一般には、水の方が1gあたりの蒸発(気化)に必要な熱量(気化熱)が大きいことがよく知られています。したがって、蒸発にかかる時間の違いだけでは、1gあたりの必要熱量の大小を逆転させる根拠にはなりません。
問13:正解1
<解説>
質量パーセント濃度が一定のエタノール水溶液(たとえば10%など)を作る場合は、エタノールと水を「質量」で量って混合するのが基本です。選択肢のうち、「エタノール100 gをビーカーに入れ、水900 gを加える」方法は、最終的にエタノールと水の合計を1000 g(うちエタノール100 g)にするという点で、所望の質量パーセントになるよう正しく調整できます。一方、体積(mL)で量ろうとすると、エタノールの密度が水より小さいため、実際のエタノールの質量が意図する値とずれてしまい、所望の質量パーセント濃度になりません。
問14:正解3
<解説>
比較的低濃度(例:10%程度)のエタノール水溶液を部分的に蒸留すると、蒸発しやすいエタノールが先に多く含まれた蒸留液が得られます。すると、残った液体の方は相対的に水の割合が増えてエタノール濃度が下がります。問題文中では、原液を9割残しつつ1割分を蒸留させる操作を行った結果、残りの液体(残留液)のエタノール濃度がさらに低くなる様子が記述されています。その程度を検証すると、具体的な数字としては、元の濃度よりもいくぶん低い値(たとえば 5%台後半)になることがわかります。
問15:正解3
<解説>
蒸留操作を繰り返すと、よりエタノールの割合が高い部分を蒸留液として集め、残留液の方はエタノールが抜けて水が多くなるため、蒸留液は徐々に高いエタノール濃度へ近づいていきます。問題文の手順では、まず原液から蒸留液1(濃度の高いエタノール水溶液)を得て、続いてその蒸留液1を同様の方法で再度加熱・蒸留すると、さらに高濃度の蒸留液2が得られます。その結果、エタノールの質量パーセント濃度は、一度目の蒸留液よりも顕著に高い値(例えば70%台後半)になることが確認できます。通常、エタノールと水の混合系には共沸組成とよばれる限界がありますが、問題文の操作範囲では大幅に濃度を高められることがわかります。