解答
解説
第1問
問1:正解1
<解説>
問題文では、「原核生物ではない生物」を選ぶように指示されています。原核生物は一般に核をもたず、細胞内に膜構造がほとんど見られない単細胞生物の総称です。一方、菌類のなかでも酵母菌(いわゆるイースト菌)は真核生物に分類されます。したがって、他の選択肢(乳酸菌、大腸菌、肺炎双球菌)はいずれも細菌に属する原核生物なので、このうち酵母菌だけが「原核生物ではない生物」に該当します。
問2:正解4
<解説>
図中では、原核生物と真核生物の特徴や、細胞小器官(核・細胞壁・ミトコンドリア・葉緑体など)に関する書き込みがいくつか示されています。そこに紛れ込んでいる誤りが、いくつ存在するかを見分ける問題です。たとえば、真核細胞にしか存在しないはずの構造を原核細胞側に書いていたり、あるいはミトコンドリアとシアノバクテリアを混同していたりすると、書き込みが誤りとなります。問題文の説明を注意深く読むと、複数の箇所で誤りが見つかるため、最終的に提示された選択肢の中で適切な数を選ぶことができます。
問3:正解6
<解説>
光合成や呼吸の過程で有機物の分解や合成が行われる際、ATPを介してエネルギーのやり取りが行われます。図では、I〜IIIの各段階に当てはまる模式図(有機物の分解や二酸化炭素・酸素の出入り、ATPの生成・利用など)を正しく組み合わせるパズルのような形式になっています。たとえば、光合成の過程では有機物が合成される方向の矢印が描かれ、呼吸の過程では有機物が分解されて二酸化炭素が発生する方向の矢印となります。さらに、ATPの産生や消費の様子が描かれたピースを対応させながら正しく組み合わせていくと、最終的に選択肢から該当の番号が導かれます。
問4:正解4
<解説>
転写の過程では、DNA上の塩基配列を鋳型としてmRNAが合成されます。このとき、鋳型となるDNAや原料となるRNAヌクレオチドは必ず必要です。一方で、DNAを新たに合成するための酵素などは転写そのものには不要です。また、mRNAを合成する酵素は必要ですが、mRNAを分解する酵素なども転写の場面では直接関わりません。選択肢の中で、これら必要・不要の組合せが正しく示されているものを選ぶことで解答が導かれます。
問5:正解5
<解説>
翻訳では、mRNA上の連続した3つの塩基配列(コドン)によって1種類のアミノ酸が指定されます。問題文では、コドンの3番目の塩基が常にCであると与えられています。残りの2つの塩基(1番目と2番目)については、mRNAに存在しうる4種類の塩基がそれぞれに入る可能性があるため、組み合わせとしては4通りと4通りを掛け合わせた数だけ異なるコドンを作ることができます。そうすると、最終的に得られるコドンの総数が、そのまま指定できるアミノ酸の種類数として上限になります。問題文の条件に合う選択肢を比較していくと、該当の数値に合致するものが答えとなります。
問6:正解3
<解説>
問題文では、試験管内で転写と翻訳の過程を再現し、紫外線照射や目的の酵素処理を組み合わせてタンパク質合成を確認する実験キットを想定しています。たとえば、転写を行った溶液にはDNA情報から合成されたmRNAが含まれており、さらに翻訳に必要な物質を加えることでタンパク質が合成されます。しかし、あらかじめDNAを分解する酵素やmRNAを分解する酵素を加えると、どのような結果になるかが変化します。実験条件ごとに「DNAが残るか」「mRNAが残るか」を考え、最終的にタンパク質が合成されるかどうかを推測すると、表に示された選択肢の中で妥当な組合せが導き出せます。
第2問
問7:正解1
<解説>
血液中の塩類濃度が高くなると、脳下垂体後葉からバソプレシン(別名:抗利尿ホルモン)が分泌されます。バソプレシンは主に腎臓の集合管に作用し、そこを通る水をより透過しやすくすることで体内への水の再吸収を促進します。その結果、尿中に排出される水分量が減り、体内の水分量を保とうとします。問題文中にある「血液中の塩類濃度が上昇するとバソプレシンが分泌され、腎臓の〇〇(集合管など)に作用して水の再吸収が促進される」という流れを把握しておくと、この選択肢が妥当であると判断できます。
問8:正解3
<解説>
淡水環境に生息するゾウリムシは、周囲よりも細胞内の塩類濃度が高いため、水が細胞内に流入しやすい状態です。過剰に取り込んだ水は収縮胞(収縮砲とも呼ぶ)によってくみ上げられ、定期的に体外へ排出されます。
塩類濃度が低いほど体内への水の流入は大きくなるため、収縮胞の収縮回数は多くなります。一方で、塩類濃度が高いほど水の流入量が少なくなり、収縮胞の収縮回数は減少する傾向にあります。問題文では、ゾウリムシを0.00%(ほぼ真水)から0.20%までの塩化ナトリウム水溶液に入れたときの1分間あたりの収縮回数を測定しています。真水に近いほど頻繁に収縮し、高めの濃度ほど収縮回数が少なくなる、という直線的な低下傾向をとらえるグラフが最も適切となります。
問9:正解7
<解説>
ウイルスが体内に侵入した際、自然免疫と獲得免疫が協力してウイルスを排除します。自然免疫に関わる細胞の代表例としてはナチュラルキラー細胞があり、感染初期から活動してウイルスに感染した細胞などを速やかに攻撃します。一方、キラーT細胞は獲得免疫の中心となり、ウイルス感染細胞を特異的に認識し、後半に強く働いてその排除を助けます。問題文の図でも、感染後早期にピークを迎えている細胞と、ある程度時間が経過してから増強する細胞の2種類が示されており、前者をナチュラルキラー細胞、後者をキラーT細胞として考えると説明がつきます。
問10:正解4
<解説>
白血球のうち、食作用をもつ代表的な細胞には好中球やマクロファージ、樹状細胞などがあります。一方、リンパ球(B細胞・T細胞など)は抗体産生や細胞性免疫などに関わりますが、通常は食作用を行いません。問題文に挙げられた候補として、好中球(c)・樹状細胞(d)はいずれも食作用をもつことで知られていますが、リンパ球(e)は食作用を行わないため含めないのが妥当です。したがって、過不足なく「食作用をもつ白血球」を含む組合せとしては、好中球と樹状細胞をセットにしたものが該当します。
問11:正解3
<解説>
問題文の実験では、初めての抗原(A)を注射したときは、体内でその抗原に対する抗体がゆるやかに産生され(一次応答)、再び同じ抗原Aを注射すると、二度目以降の免疫応答(二次応答)によって抗体の産生量が急速かつ大きく上昇します。一方、新たに注射された抗原Bに対しては初めての接触となるため、やはり一次応答のパターンを示す小さめのピークになります。図では、抗原Aに対する抗体は二度目の注射で急激に上昇し、抗原Bに対する抗体はその後遅れて低めのピークを示す形が描かれています。この特徴的な二次応答の大きな上昇と、新たな抗原であるBの一次応答の違いが最も分かりやすく示されているものが正しいグラフと考えられます。
第3問
問12:正解1
<解説>
図中の点線Pは、年平均気温と年降水量との関係から見た森林形成の限界線の一つとして考えられます。点線Pの上側は、樹木が生育できるだけの降水量や温暖さが確保されるため、森林が発達しやすくなります。一方、線の下側は降水量が少なく乾燥が進むため、森林の成立が難しくなります。したがって「点線Pより上側では、森林が発達しやすい」という記述が最も適当です。
問13:正解2
<解説>
問題文では、観測点XやYの周囲で地球温暖化が進んだ際、降水量の変化が比較的小さいと仮定した場合に、どのようなバイオーム(植生)へと変化するかを問うています。
一般に、気温が上昇しても降水量が大きく変化しない場合、落葉広葉樹林から常緑広葉樹林など、より高温で葉のつくりが厚くなった樹種が中心となる植生へ移行しやすいと考えられます。問題文では、観測点X周辺が「落葉広葉樹を主体とするバイオームから常緑広葉樹を主体とするバイオーム」に変化すると示唆されているため、その組合せが適切です。
問14:正解7
<解説>
バイオームQはオリーブやゲッケイジュなどが優占する植生が特徴で、夏に降水量が比較的少なく、冬でも大きく冷え込みにくい地中海性気候帯の「硬葉樹林」に相当します。硬葉樹林は、厚くかたい葉をもつ樹木が乾燥する夏を生き抜くように適応した植生です。また、降雪が少ないため、冬でも比較的温暖・湿潤な季節となるのが特徴です。問題文の記述や図をもとに判断すると、「硬葉樹林」で「降水が少なめ」かつ「降雪がほぼみられない湿潤な気候」という条件が一致するため、その選択肢が正解となります。
問15:正解2
<解説>
牛疫は高い致死率をもつウシ科動物の伝染病で、かつては家畜ウシだけでなく野生のウシ科動物にも流行していました。ウイルスを維持する宿主となる家畜ウシへ集中的にワクチン接種を行うことで、牛疫ウイルスが広範囲に感染・増殖を続ける機会が失われた結果、牛疫は根絶に至りました。つまり「家畜ウシに対するワクチン接種により抵抗性をもつ個体が増加し、ウイルスの継続的な蔓延が困難になった」という仕組みが、牛疫根絶の大きな要因として考えられます。
問16:正解6
<解説>
セレンゲティ国立公園では、牛疫根絶後にヌーの個体数が急増し、草本の減少や野火(草原火災)の拡大規模が変化しました。ヌーは草を大量に食べるため、その数が増えると草の量が減少して野火は広がりにくくなり、森林への延焼を抑える一因にもなります。
一方、もし牛疫が再び流行してヌーが激減すると、草が十分に生い茂り、乾季に火が燃え広がりやすくなるため、野火の延焼面積が増加し、森林面積が減少する恐れがあります。問題文で示された複数の記述のうち、「野火の延焼面積が増加する(c)」と「森林面積が減少する(d)」を同時に挙げる組合せが、論理的に整合すると考えられます。