2023年度 大学入学共通テスト 追試験「生物」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。
解答
解説
2023年度(令和5年度)大学入学共通テスト 追試験「生物」の全問解説です。第1問12点・第2問12点・第3問22点・第4問20点・第5問21点・第6問13点で、あわせて100点満点。すべて必答で、解答番号は1〜26です。実験の結果から何が言えて何が言えないかを切り分ける設問が多く、部分点が設定された設問も5つあります。各設問の見出しをタップすると、その問題の考え方と手順が開きます。まちがえた設問だけを選んで確認してください。
第1問 生体膜のタンパク質と免疫(MHC 分子・抗原提示)
小問3題で12点。問2はマウスに異物と物質 M を注射した2つの実験を比べ、「どの選択肢が結果と矛盾するか」を探します。問3は MHC 分子と抗体遺伝子の再構成を混同していないかを問う設問です。
問1:正解 ⑤(解答番号1/配点4)
<問題要旨>
下線部(a)「生体膜に存在するタンパク質」の例として最も適当なものを選びます。
<考え方>
各タンパク質が細胞のどこで働いているかを1つずつ確かめます。核の中・細胞質基質・微小管上のものは、生体膜に存在するとは言えません。
① DNA と結合してヌクレオソームを形成
= ヒストン
核の中で DNA に巻きつく
膜のタンパク質ではない ×
② 複数のポリペプチドからなり酸素を運搬
= ヘモグロビン
赤血球の細胞質に溶けている ×
③ 鞭毛や繊毛の屈曲に働く
= ダイニン
微小管の上を動くモータータンパク質
×
④ 解糖系で触媒として働く
解糖系の酵素は細胞質基質にある ×
⑤ ミトコンドリアで H⁺ の濃度勾配を
利用して ATP を合成する
= ATP 合成酵素
ミトコンドリア内膜に埋まっている ○
よって ⑤
問2:正解 ④(解答番号2/配点4)
<問題要旨>
実験1(病原体でない異物のタンパク質 Q をマウス X に注射 → Q に対する抗体が検出)と実験2(Q に加えて物質 M をマウス Y に注射 → 実験1より大量の抗体が検出)から導かれる考察として、適当でないものを選びます。
<考え方>
実験1で「抗体ができた」という事実から、何が起きていたはずかを逆算します。抗体ができるには抗原提示が必要なので、提示が起きていないとする選択肢は結果と矛盾します。
【実験1が示すこと】
病原体でない Q に対しても
抗体がつくられた
→ 樹状細胞などが Q の断片を
MHC 分子上に提示し
T 細胞が認識していたはず
【実験2が示すこと】
物質 M を加えると抗体が大量に
→ M が受容体 N で認識され
シグナル分子 P が多く分泌され
T 細胞が強く活性化された
【選択肢の判定】
① 抗体産生細胞は病原体でない異物にも
抗体をつくれる
実験1のとおり 適当
② T 細胞は病原体でない異物の断片も
MHC 分子に結合したものとして
認識できる 適当
③ 物質 M は大量の抗体を得たいときに
利用可能
実験2のとおり 適当
④ 樹状細胞は MHC 分子上に Q の断片を
提示することができない
提示できなければ実験1で
抗体はつくられないはず
結果と矛盾する ←これ
⑤ 実験2で抗体が多かったのは
シグナル分子 P が多く分泌されたから
適当
よって ④
問3:正解 ①(解答番号3/配点4)
<問題要旨>
ヒトの免疫における MHC 分子に関する記述 ⓐ〜ⓒ のうち適当なものを過不足なく含むものを選びます。
<考え方>
「遺伝子の再構成」が起こるのは抗体(免疫グロブリン)と T 細胞受容体の遺伝子で、MHC ではありません。また拒絶反応で非自己の MHC を認識するのはどの細胞かを確認します。
ⓐ MHC の遺伝子座は複数あり
それぞれに多くの対立遺伝子があるため
2個体で全て同じになるのはまれ
だから移植で拒絶反応が起こる ○ 適当
ⓑ MHC の対立遺伝子は B 細胞の分化に伴って
再構成されるため、限られた数の遺伝子から
膨大な種類の抗体を産生できる
再構成されるのは
「抗体(免疫グロブリン)の遺伝子」
MHC の遺伝子ではない × 不適当
ⓒ 臓器移植で好中球やマクロファージが
移植組織の MHC を非自己と認識して
拒絶反応が起こる
非自己の MHC を認識するのは T 細胞
好中球やマクロファージではない
× 不適当
適当なのは ⓐ のみ
よって ①
第2問 卵膜のタンパク質と受精
小問3題で12点。表の「結合した/しなかった」を丁寧に読み比べる問題です。問2はグラフの「分子の数は同じで長さだけが変わる」という点から、タンパク質 W の働きを1つに絞ります。
問1:正解 ②(解答番号4/配点4)
<問題要旨>
実験1(卵膜に X_A、X_B、または両方を発現させた未受精卵に、種 A または種 B の精子を加える)と実験2(タンパク質 X の一部にあたるポリペプチド P_A または P_B を発現させる)の結果(表1・表2)から導かれる記述として最も適当なものを選びます。
<考え方>
表1と表2を見比べます。表2で「P だけでも結合した」という事実が、タンパク質 X のどの部分が結合に必要かを教えてくれます。
【表1の読み取り】 なし … A も B も結合しない X_A のみ … A の精子だけ結合 X_B のみ … B の精子だけ結合 X_A と X_B … A も B も結合 → 精子は同じ種の X としか結合しない 【表2の読み取り】 P_A のみ … A の精子だけ結合 P_B のみ … B の精子だけ結合 → X の一部である P だけで 種特異的な結合が成立する 【選択肢の判定】 ① 種 B の精子が結合するには X_A が必要 表1で X_B だけでも結合している × ② 種 B の精子が結合するには X_B のうち P_B 以外の部分は必要ない 表2で P_B だけで結合している ○ ③ X_B があると種 A の精子の結合が妨げられる 表1で X_A と X_B の両方でも A の精子は結合している × ④ P_A と P_B のアミノ酸配列は同じ 同じなら結合する精子の種も同じはず 実際は種ごとに違う × ⑤ 種 A の精子は P_A と直接結合する 実験からは「卵膜に結合した」ことしか 分からず、直接結合とまでは言えない × よって ②
問2:正解 ④(解答番号5/配点4)
<問題要旨>
実験3では、野生型の受精卵には精子が結合しなくなったが、タンパク質 W の働きを失わせた変異体 w の受精卵には多くの精子が結合しました。どの卵の卵膜にも同程度の数の X_A があり、その長さを調べた結果が図2です。タンパク質 W の働きについての考察として最も適当なものを選びます。
<考え方>
「分子の数は変わらないのに、長さだけが変わる」という2つの事実を並べます。数が減らないなら合成の抑制ではなく、できあがったタンパク質に何かが起きたことになります。
【与えられた事実】 ① どの卵でも X_A の分子の数は同程度 ② 図2の長さ(相対値) 野生型 未受精卵 1 → 受精卵 約0.6 変異体w 未受精卵 1 → 受精卵 1 【①から言えること】 数が減っていない → 合成の抑制ではない ① 分泌の抑制 → 数が減るはず × ② 翻訳の抑制 → 数が減るはず × ⑤ 転写の抑制 → 数が減るはず × 【②から言えること】 野生型では受精後に X_A が短くなる 変異体 w では短くならない → W が X_A を短くしている ③ 複合体を形成する 複合体なら長さは長くなるはずで 短くなる説明にならない × ④ X_A の一部を切断する 短くなることを説明できる ○ 【意味づけ】 受精後、W が X_A を切断して短くする → 精子が結合できなくなる → 多精拒否の仕組み よって ④
問3:正解 ⑥(解答番号6/配点4)
<問題要旨>
タンパク質 Y が数珠状に連なって長い繊維へ伸長することが卵膜形成に必要です。変異型タンパク質 Y₁(分泌され繊維に組み込まれるがそこで伸長を妨げる)、Y₂(分泌されるが繊維に組み込まれない)、Y₃(分泌されず正常な Y の分泌も妨げる)について、正常な遺伝子とのヘテロ接合で卵膜が形成されるかどうかの組合せを選びます。
<考え方>
ヘテロ接合では正常な Y も変異型もつくられます。「正常な Y だけで繊維を伸ばしきれるか」を1つずつ考えます。変異型が正常な Y の邪魔をするかどうかが分かれ目です。
【ア Y₁ とのヘテロ接合】 Y₁ は繊維に組み込まれ そこで伸長を止めてしまう 正常な Y と混ざって繊維をつくると Y₁ が入ったところで伸びなくなる → 長い繊維ができない ア = 形成されない 【イ Y₂ とのヘテロ接合】 Y₂ は分泌されるが 繊維に組み込まれない → 正常な Y だけで繊維がつくられる 邪魔をしない イ = 形成される 【ウ Y₃ とのヘテロ接合】 Y₃ は分泌されず しかも正常な Y の分泌も妨げる → 正常な Y が細胞外に出られない 繊維の材料が届かない ウ = 形成されない ア 形成されない イ 形成される ウ 形成されない よって ⑥
第3問 トゲウオの腹棘と鱗板(進化と遺伝子の発現調節)
海洋型と淡水型の分化を題材にした22点の大問です。問2は「別々の遺伝子が原因なら子はどうなるか」を問う相補性の考え方、問3は転写調節領域とタンパク質のどちらに変異があるのかを実験で切り分ける設問で、この年でも難度が高い設問が並びます。
問1:正解 ⑧(解答番号7/配点5)
<問題要旨>
魚類の腹びれは四足動物の後肢の相同器官です。記述 ⓐ〜ⓓ のうち、四足動物の後肢に関する適当な記述を過不足なく含むものを選びます。
<考え方>
発生(何胚葉のどこに由来するか)、生理(神経伝達物質)、進化史(いつ起こったか)、霊長類の特徴の4方向から問われています。1つずつ独立に判定します。
ⓐ 後肢の筋肉は神経胚の側板に由来する
四肢の骨格筋は体節(沿軸中胚葉)由来
側板からは骨や結合組織ができる
× 不適当
ⓑ 後肢の筋肉の運動には
アセチルコリンの作用が必要
運動神経と骨格筋の接合部(神経筋接合部)で
放出される伝達物質がアセチルコリン
○ 適当
ⓒ 腹びれから後肢への進化は古生代に起こった
脊椎動物の陸上進出は
古生代デボン紀〜石炭紀
○ 適当
ⓓ 霊長類の後肢の拇指対向性は類人猿で失われた
チンパンジーやゴリラなどの類人猿は
後肢の拇指対向性をもつ
失ったのはヒト × 不適当
適当なのは ⓑ と ⓒ
よって ⑧
(ⓑだけ、ⓒだけを選んだ場合も部分点2点)
問2:正解 ①(解答番号8/配点4)
<問題要旨>
種 A・種 B とも、海洋型と淡水型を交配して得られた個体は全て腹棘を形成しました。種 B の淡水型の腹棘喪失は遺伝子 X とは別の遺伝子が原因だと考え、種 A の淡水型と種 B の淡水型を交配しました。この考えが正しいとすると、得られた雑種で腹棘を形成する個体としない個体の比はどうなるかを求めます。
<考え方>
それぞれの淡水型がどの遺伝子で機能を失っているかを書き出します。原因遺伝子が別なら、互いに「相手の壊れていない遺伝子」を持ち寄ることになります。
【まず優劣を確認】 海洋型 × 淡水型 → 全て腹棘あり → 腹棘を失う対立遺伝子は劣性 【それぞれの淡水型の遺伝子型】 遺伝子X を x、種B の原因遺伝子を Z, z とする 種A の淡水型 遺伝子X … 機能喪失 xx 遺伝子Z … 正常 ZZ → xxZZ 種B の淡水型 遺伝子X … 正常 XX 遺伝子Z … 機能喪失 zz → XXzz 【交配】 xxZZ × XXzz → 子は全て XxZz 遺伝子X も遺伝子Z も 正常な対立遺伝子を1つずつ持つ → どちらの機能も回復する → 全て腹棘を形成する 腹棘あり : なし = 1 : 0 よって ① (原因遺伝子が別であることを確かめる 「相補性検定」の考え方)
問3:正解 ② ⓐ(解答番号9・10/配点5)
<問題要旨>
仮説「タンパク質 X は淡水型か海洋型かによらず腹棘形成に必要な全ての遺伝子を活性化できる。淡水型で腹棘を喪失した原因の突然変異は、アミノ酸配列を指定する領域以外で生じた」を検証する実験1(GFP を使った発現部位の観察)と実験2(GFP をタンパク質 X の遺伝子に置き換える)の空欄を埋めます。
<考え方>
実験1は「発現の場所」を見ています。頭部と腹部の両方で光るのが海洋型、頭部だけが淡水型のパターンです。実験2は仮説の後半を確かめる決定的な実験で、「淡水型のタンパク質でも腹部で働けば腹棘ができる」ことを示せばよいことになります。
【実験1(解答番号9)】 プラスミドP → 頭部と腹部で蛍光 = 海洋型の発現パターン ア = 海洋型 プラスミドQ → 頭部のみで蛍光 = 淡水型の発現パターン ウ = 淡水型 イ … 発現する場所を決める領域 「オペレーター」は原核生物の用語 真核生物では 転写調節領域 イ = 転写調節領域 → ②(海洋型・転写調節領域・淡水型) 【実験2(解答番号10)】 目的:タンパク質Xそのものは 淡水型でも正常に働くことを示す プラスミドP(海洋型の転写調節領域) + 淡水型のタンパク質Xの遺伝子 → 腹部でも淡水型のXが働く エ = 淡水型 これを淡水型の受精卵に入れて 腹棘ができれば仮説どおり オ = 淡水型 カ = した → ⓐ(淡水型・淡水型・した) 9 → ② 10 → ⓐ
問4:正解 ④(解答番号11/配点4)
<問題要旨>
遺伝子 X では周辺の塩基配列に淡水域ごとに異なる欠失がみられた一方、遺伝子 Y およびその周辺は淡水域間での違いが小さいことが分かりました。また海洋型の一部の個体は、淡水型の塩基配列と海洋型の塩基配列をヘテロ接合で持っていました。腹棘または鱗板の喪失に関する考察として適当でないものを選びます。
<考え方>
「淡水域ごとに違う」=それぞれの場所で別々に起きた、「違いが小さい」=もとは1つで、それが広まった、と読みかえます。海洋型のヘテロ接合の意味を取り違えないことがポイントです。
【事実の整理】 遺伝子X の周辺 淡水域ごとに異なる欠失 → 変異は各地で独立に生じた 遺伝子Y とその周辺 淡水域間の違いが小さい → もとは一つの対立遺伝子で それが各地に広がった 海洋型の一部個体 淡水型の配列をヘテロ接合で保持 → 海では低頻度で潜んでいた 【選択肢の判定】 ① 腹棘喪失の対立遺伝子は それぞれの淡水域で独立に生じた 適当 ② 腹棘を欠いた個体はどの淡水域でも適応的 各地で独立に広まった以上、適応的 適当 ③ 鱗板喪失の対立遺伝子は もともと一つの対立遺伝子に由来 適当 ④ 淡水域への進入が始まる前に 鱗板を欠いた個体からなる集団が ある海域で生じた 海洋型では多くの個体が 淡水型と大きく異なる配列をもち 一部がヘテロ接合で持っていただけ 「鱗板を欠いた個体からなる集団」は できていない ←これが適当でない ⑤ 鱗板喪失の対立遺伝子は海を介して 各地の淡水域に広がり頻度を増した 適当 よって ④
問5:正解 ⑥(解答番号12/配点4)
<問題要旨>
遺伝子型 Yy の個体だけを捕食者のいない人工池に放流して繁殖させ、稚魚を翌春まで飼育して遺伝子型・全長・成熟の有無を調べた結果が図3です。鱗板を喪失した集団が淡水域で進化した理由を過不足なく含むものを選びます。
<考え方>
3つの候補(孵化率・成長・成熟)を1つずつグラフで確かめます。孵化率は「個体数の比が期待値どおりか」で判定できます。
【孵化率(個体数の比)】 Yy × Yy の交配なので 期待される比は YY : Yy : yy = 1 : 2 : 1 実際 39 : 79 : 40 → ほぼ 1 : 2 : 1 で期待どおり → 遺伝子型による孵化率の差はない 【成長(全長の分布)】 YY 20〜55 mm、山は 40〜45 Yy 20〜60 mm、山は 45〜50 yy 30〜60 mm、山は 50〜55 → yy ほど大きい=成長が速い ○ 【成熟(濃い色の個体)】 YY ほとんどなし Yy 中程度 yy 多い → yy ほど成熟が早い ○ 適当なのは「成長が速い」「成熟が早い」 よって ⑥ (どちらか一方だけの ② ③ にも部分点1点)
第4問 光合成とルビスコ・気孔(CO₂ 濃度上昇の影響)
小問5題で20点。ルビスコが CO₂ と O₂ の両方を基質にすることを軸に、酵素の阻害、気孔の開閉のフィードバック、孔辺細胞の分化、そして CO₂ 濃度上昇の影響へと話が広がります。問3は矢印の向きと + − を1つずつたどれば必ず解ける設問です。
問1:正解 ⑤(解答番号13/配点4)
<問題要旨>
下線部(a)「光のエネルギーを使って CO₂ を有機物に取り込む」について、光エネルギーの使われ方の説明として最も適当なものを選びます。
<考え方>
光合成は「チラコイドの反応(光エネルギー → ATP・NADPH)」と「ストロマの反応(カルビン・ベンソン回路)」に分かれます。光エネルギーが直接何かを活性化するのではない点を押さえます。
【光合成の2段階】 チラコイド(光化学系) 光エネルギーで H₂O を分解し ATP と NADPH をつくる ストロマ(カルビン・ベンソン回路) ATP と NADPH を使って CO₂ を有機物に固定し RuBP を再生 【選択肢の判定】 ① ルビスコが光エネルギーを吸収して活性型 ルビスコは光を吸収しない × ② RuBP が光エネルギーを吸収して活性型 RuBP も光を吸収しない × ③ H₂O の分解により CO₂ 固定反応の 活性化エネルギーが小さくなる 活性化エネルギーを下げるのは触媒 水の分解ではない × ④ H⁺ の輸送と連動して RuBP が濃縮される H⁺ の輸送は ATP 合成に使われる RuBP の濃縮ではない × ⑤ 光化学系で生産された ATP と NADPH が カルビン・ベンソン回路による RuBP の再生産に必要 ○ よって ⑤
問2:正解 ④(解答番号14/配点4)
<問題要旨>
ホウレンソウのルビスコのカルボキシラーゼ反応とオキシゲナーゼ反応について、CO₂ 濃度・O₂ 濃度・温度の影響を調べた図1から導かれる考察として、適当でないものを選びます。
<考え方>
競争的阻害と非競争的阻害の違いは「最大反応速度が変わるかどうか」です。問題文に「同じ活性部位に」と書かれている点も大きなヒントになります。
【図1左(カルボキシラーゼ)】 30℃ O₂=0 最大 約11 30℃ O₂=210 最大 約10.7 15℃ O₂=0 最大 約3.9 15℃ O₂=210 最大 約3.8 → O₂ を加えても最大速度はほぼ同じ 低 CO₂ 濃度では遅くなる = 競争的阻害の特徴 【図1右(オキシゲナーゼ)】 CO₂ を加えると反応速度が下がる 【選択肢の判定】 ① 最大反応速度は温度が高いほうが大きい カルボキシラーゼ 11 > 3.9 オキシゲナーゼ 3.7 > 2.7 適当 ② 通常の大気の下で オキシゲナーゼに対するカルボキシラーゼの比は 温度が高いほうが小さい 30℃ 約4.3 ÷ 約1.5 ≒ 2.9 15℃ 約2.3 ÷ 約0.4 ≒ 5.8 たしかに高温のほうが小さい 適当 ③ O₂ はカルボキシラーゼ反応に対して 競争的阻害物質として作用 適当 ④ CO₂ はオキシゲナーゼ反応に対して 競合しない阻害物質(非競争的阻害物質) 問題文に「それと同じ活性部位に」とあり CO₂ と O₂ は同じ場所を奪い合う = 競争的阻害 「競合しない」は誤り ←これ よって ④
問3:正解 ⑦(解答番号15/配点4)
<問題要旨>
オナモミで外気の CO₂ 濃度を変え、葉内 CO₂ 濃度・気孔の開き具合・光合成速度を調べた図2をもとに、図3のネットワークの ア〜エ に入る語句と記号の組合せを選びます。
<考え方>
図3の矢印を1本ずつ日本語に直します。「外気濃度が上がると増え、葉内濃度が上がると減るもの」は何か、を考えるとアが決まります。ウ・エは図2のグラフの向きで決まります。
【ア に入るもの】 外気CO₂濃度 →(+)→ ア 葉内CO₂濃度 →(−)→ ア 外気が上がると増え 葉内が上がると減るもの = 外気と葉内の間の CO₂ 濃度の差 ア = 外気と葉内の間の CO₂ 濃度の差 【イ に入るもの】 ア →(+)→ イ 気孔の開き →(+)→ イ イ →(+)→ 葉内CO₂濃度 濃度差が大きいほど増え 気孔が開くほど増え 増えると葉内濃度が上がるもの = 外気から葉内への CO₂ の流入 イ = 外気から葉内への CO₂ の流入 【ウ 葉内CO₂濃度 → 気孔の開き】 図2で外気CO₂が上がると 葉内CO₂濃度は上がる 気孔の開きは 0.9 → 0.3 と下がる ウ = − 【エ 葉内CO₂濃度 → 光合成速度】 図2で外気CO₂が上がると 葉内CO₂濃度は上がる 光合成速度も 0.1 → 1.0 と上がる エ = + よって ⑦
問4:正解 ⑥(解答番号16/配点4)
<問題要旨>
CO₂ 濃度を通常または2倍にした環境で育てたシロイヌナズナの、その時点で成熟していた葉だけを異なる濃度の CO₂ にさらし、若い葉が成熟した後に気孔の密度を調べた実験(図4・図5)から導かれる考察を選びます。
<考え方>
図5の4本の棒を「環境の CO₂ を変えたときの差」と「成熟葉に与えた CO₂ を変えたときの差」に分けて比べます。差が大きいほうが、気孔密度を決めている要因です。
【図5の4条件(若い葉の気孔密度)】
環境 通常 / 成熟葉 通常 … 約255
環境 通常 / 成熟葉 2倍 … 約215
環境 2倍 / 成熟葉 通常 … 約245
環境 2倍 / 成熟葉 2倍 … 約200
【成熟葉に与えた CO₂ を変えたとき】
255 → 215(差 約40)
245 → 200(差 約45)
→ 大きく下がる
【環境(若い葉)の CO₂ を変えたとき】
255 → 245(差 約10)
215 → 200(差 約15)
→ ほとんど変わらない
【判定】
ⓐ CO₂ が高いと孔辺細胞の分化が起こりやすい
実際は密度が下がっている × 不適当
ⓑ CO₂ が高いと孔辺細胞の分化が起こりにくい
○ 適当
ⓒ CO₂ の情報は成熟葉と若い葉の間で移動しない
成熟葉の CO₂ で若い葉が変わっている
× 不適当
ⓓ CO₂ の情報は成熟した葉から若い葉に移動する
○ 適当
ⓔ CO₂ の情報は若い葉から成熟した葉に移動する
若い葉側の CO₂ を変えても
ほとんど変化がなく、確かめられない
× 不適当
適当なのは ⓑ と ⓓ
よって ⑥
(ⓔ も含めた ⑧ には部分点2点)
問5:正解 ②(解答番号17/配点4)
<問題要旨>
温暖化を伴わずに地球全域で一様に大気中の CO₂ 濃度が2倍に上昇した仮想的状況で、植物の物質生産がどう変化するかを推論します。オ〜キの組合せを選びます。
<考え方>
問2〜問4で分かったことをそのまま使います。オは問2のグラフ、カは問2の温度による比の違い、キは問4の気孔密度の結果から決まります。
【オ 物質生産は増えるか減るか】 CO₂ が増えると カルボキシラーゼ反応が促進 オキシゲナーゼ反応(光呼吸)が抑制 → 有機物の合成は増える オ = 増大 【カ どこで顕著か】 問2より 温度が高いほど カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ の比が小さい = 光呼吸による損失が大きい → CO₂ を増やしたときの効果が大きい また乾燥地域では気孔を閉じがちで 葉内 CO₂ が不足しやすいので 外気 CO₂ 上昇の恩恵が大きい カ = 低緯度地方や乾燥地域 【キ 数か月・数年続くと】 問4より CO₂ 濃度が高い状態が続くと 孔辺細胞の分化が抑えられ 気孔の密度が下がる → CO₂ の取り込みが制限される → 増大の効果は薄れる キ = やや小さくなる よって ②
第5問 植物の分類・生殖・系統(重複受精と花の構造)
会話文から広がる21点の大問です。問3は胚のうの核の数と染色体数を正確に数える計算、問4は系統樹の上で「形質がどこで変化したか」を復元する問題で、いちばん外側で分かれた枝が祖先の状態を教えてくれます。
問1:正解 ①・⑤(解答番号18・19/配点4)
<問題要旨>
下線部(a)に関連して、植物にみられる特徴やその進化に関する記述として適当なものを二つ選びます。
<考え方>
胞子体と配偶体を取り違えないことが最大のポイントです。「胞子が発芽して何になるか」「種子は胞子体か配偶体か」を整理してから選びます。
① 最初に陸上に進出した植物は
胞子で繁殖し維管束を持たなかった
コケ植物などが該当 ○ 適当
② 繁殖方法や維管束の有無にかかわらず
根・茎・葉の区別がある
コケ植物には根・茎・葉の区別がない
(仮根はあるが根ではない) × 不適当
③ 胞子で繁殖する植物では
胞子が発芽して胞子体になる
胞子(n)が発芽してできるのは配偶体
シダ植物なら前葉体 × 不適当
④ 種子で繁殖する植物では
通常みられる植物体は胞子体で
種子は配偶体である
植物体が胞子体なのは正しいが
種子の中の胚は次世代の胞子体
配偶体ではない × 不適当
⑤ 胞子で繁殖する植物が大型化することで
森林を形成した時代がある
古生代石炭紀の大型シダ植物の森林
○ 適当
⑥ 種子で繁殖する植物で最初に出現したものは
子房に包まれる胚珠を持っていた
最初に現れたのは裸子植物
胚珠はむき出しで子房はない × 不適当
よって ① と ⑤
問2:正解 ③(解答番号20/配点4)
<問題要旨>
被子植物における配偶子の形成から種子の形成までの記述として、誤っているものを選びます。
<考え方>
花粉側と胚のう側で、減数分裂のあとに何個の細胞が残るかが違います。胚のう側では3個が退化する点を思い出します。
① 精細胞は花粉母細胞が減数分裂と
体細胞分裂を連続して行って形成される
花粉母細胞 →(減数分裂)→ 花粉四分子
→ 花粉(花粉管細胞+雄原細胞)
→ 雄原細胞が体細胞分裂して精細胞2個
正しい
② 胚のうは胚珠の中で形成される 正しい
③ 胚のう母細胞は減数分裂を行うことで
四つの胚のう細胞を形成する
減数分裂で4個できるが
そのうち3個は退化し
胚のう細胞になるのは1個だけ
→ 誤り ←これ
④ 柱頭についた花粉は発芽して
胚のうへ向かって花粉管を伸ばす 正しい
⑤ 無胚乳種子を形成する植物でも
重複受精は起こる
胚乳はできるが発達せず
子葉に養分が吸収される 正しい
よって ③
問3:正解 ⑨(解答番号21/配点4)
<問題要旨>
体細胞の染色体数が18本であるトレニアについて、胚のうの中に存在する染色体の総数と、重複受精直後の受精卵の核・胚乳の核のそれぞれの染色体数の組合せを選びます。
<考え方>
まず n を出します。次に胚のうにいくつ核があるかを正確に数えます。胚乳の核は「極核2つ+精細胞1つ」で3n になる点が要注意です。
【n を求める】
体細胞 2n = 18
→ n = 9
【胚のうの核の数】
卵細胞 1個
助細胞 2個
中央細胞の極核 2個
反足細胞 3個
合計 8個
どの核も n = 9
染色体の総数 = 8 × 9 = 72 本
【受精卵の核】
卵細胞(n=9) + 精細胞(n=9)
= 18 本(2n)
【胚乳の核】
極核2個(9+9) + 精細胞(9)
= 27 本(3n)
72 本 / 18 本 / 27 本
よって ⑨
問4:正解 ⑧(解答番号22/配点4)
<問題要旨>
10種の植物の「がく片の有無」「子葉の数」と、遺伝子 R の塩基配列から作成した系統樹(図1)から、被子植物の花の構造と子葉の数の進化に関する考察文の空欄を埋めます(それぞれの形質の変化は1回だけ生じたとします)。
<考え方>
系統樹でいちばん根元に近いところで分かれた枝の状態が、祖先の状態です。そのうえで「1回だけ変化した」という条件を満たす枝を、がく片と子葉それぞれについて探します。
【系統樹の分かれ方】 根元でまず ハクモクレン・クスノキ が分かれる がく片なし / 子葉2 次に アヤメ・スイセン が分かれる がく片なし / 子葉1 残り(トレニア〜ユキノシタ) がく片あり / 子葉2 【ア・イ がく片】 根元に近い側が「がく片なし」 → 祖先は がく片がない ア = がく片がない イ = がく片がある 【ウ・エ 子葉】 根元に近い側が「子葉2」 → 祖先は 双子葉 ウ = 双子葉 エ = 単子葉 【オ 変化が生じた箇所】 がく片の変化(なし→ある) トレニア〜ユキノシタ の共通祖先の枝 子葉の変化(2→1) アヤメ・スイセン の共通祖先の枝 この2つは系統樹の別々の枝 オ = 異なる よって ⑧
問5:正解 ⑥(解答番号23/配点5)
<問題要旨>
植物 A の性は XY 型で決まり、X 染色体上の調節遺伝子 K は B クラス遺伝子の機能を抑制し、めしべの発達に必要な遺伝子を促進します。Y 染色体上の調節遺伝子 L は K から合成された mRNA を分解します。資料1から導かれる考察として適当なものを過不足なく含むものを選びます。
<考え方>
ABC モデルを思い出します。おしべは B と C の両方が働く領域にできるので、B が抑えられるとおしべができません。ⓐは資料1に書かれていないことまで言っていないかを確認します。
【前提の整理】
調節遺伝子K(X 染色体上)
・B クラス遺伝子の機能を抑制
・めしべの発達に必要な遺伝子を促進
調節遺伝子L(Y 染色体上)
・K の mRNA を分解する
雌株 XX … K が働く → 雌花
雄株 XY … L が K を止める → 雄花
【ABC モデル】
がく片 … A
花弁 … A+B
おしべ … B+C
めしべ … C
【判定】
ⓐ 雌花では K により B が抑制され
C クラス遺伝子が茎頂分裂組織の全体で
働くようになり、めしべが発達する
めしべの発達は K が
「めしべの発達に必要な遺伝子」を
促進することによる
C が全体で働くとは資料1にない
× 不適当
ⓑ 雌花では K により B が抑制され
発達したおしべがみられなくなる
おしべは B+C が必要
B が抑制されればできない ○ 適当
ⓒ 雄花では L により K が働かなくなり
発達しためしべがみられなくなる
K が止まると
めしべの発達に必要な遺伝子が
促進されない ○ 適当
適当なのは ⓑ と ⓒ
よって ⑥
(ⓑだけ、ⓒだけを選んだ場合も部分点2点)
第6問 骨格筋の形成と反射(膝蓋腱反射の所要時間)
小問3題で13点。問1は電気泳動のバンドの本数で「細胞が融合したかどうか」を判定する実験設計の問題、問3は伝導速度とシナプスでの遅れを足し合わせる計算です。シナプスを何個数えるかで答えが変わります。
問1:正解 ⑥(解答番号24/配点4)
<問題要旨>
筋繊維では2分子が複合体 P–P を形成するタンパク質 P があり、働きに違いのない P_A と P_B が同じ種類か異なる種類かにかかわらず複合体をつくります。P_A の遺伝子のみを持つマウス A と P_B の遺伝子のみを持つマウス B を利用して、複数の筋芽細胞が融合していることを示す実験1の空欄を埋めます。
<考え方>
「融合したかどうか」を見分けるには、もともと別々の細胞にあった P_A と P_B が同じ細胞の中で出会うかを調べます。交配してしまうと1つの細胞に両方の遺伝子が入ってしまい、融合の証拠になりません。
【ア 何をすべきか】 交配して両方の遺伝子を持つ子マウス → 1つの細胞の中に P_A と P_B が共存 → 融合しなくても P_A–P_B ができる → 判別できない × それぞれから単離した筋芽細胞を 混合して培養する → P_A だけの細胞と P_B だけの細胞 → 融合したときだけ P_A–P_B が生じる ○ ア = それぞれから単離した筋芽細胞を 混合して培養した 【イ バンドの本数】 融合して両方が同じ細胞に入ると 組合せは P_A–P_A P_A–P_B P_B–P_B の3種類 これらは電気泳動で区別できるので イ = 3 本 よって ⑥
問2:正解 ②(解答番号25/配点4)
<問題要旨>
有髄神経繊維の特徴として適当な記述を、ⓐ〜ⓓ から過不足なく選びます。
<考え方>
髄鞘が何でできていて何をしているかを確認します。跳躍伝導が起こる理由と、伝導速度が速いか遅いかがポイントです。
ⓐ ランビエ絞輪の部分でのみ興奮が発生する
髄鞘の部分は絶縁されているので
興奮はランビエ絞輪だけで生じ
そこを飛び飛びに伝わる(跳躍伝導)
○ 適当
ⓑ 髄鞘は軸索の一部がふくらんだもの
髄鞘はシュワン細胞(末梢神経)が
軸索に何重にも巻きついたもの
軸索そのものではない × 不適当
ⓒ 髄鞘は電気的な絶縁体としての役割を果たす
だから絞輪の間を電流が飛ぶ ○ 適当
ⓓ 同じ太さの無髄神経繊維と比べて
興奮の伝導速度は小さい
跳躍伝導により有髄のほうが速い
× 不適当
適当なのは ⓐ と ⓒ
よって ②
問3:正解 ③(解答番号26/配点5)
<問題要旨>
膝蓋腱反射の経路(図1)について、筋肉 X を収縮させる運動神経と筋肉 Y を収縮させる運動神経の扱い(ウ・エ)と、刺激を受けてから筋肉 X に信号が伝わるまでの時間(オ)を求めます。感覚神経 10 m/秒、運動神経 50 m/秒、シナプス1つあたり1ミリ秒、Q–R–S は 60 cm、T–U は 50 cm です。
<考え方>
ウ・エは拮抗筋の関係で決まります。オは「感覚神経の伝導+シナプス+運動神経の伝導+神経筋接合部」を足します。神経筋接合部もシナプスとして1ミリ秒を数えるのを忘れないでください。
【ウ・エ 拮抗筋】 膝蓋腱反射では 伸筋(筋肉X)を収縮させる運動神経 → 興奮させる 屈筋(筋肉Y)を収縮させる運動神経 → 介在ニューロンを介して抑制する 両方が同時に収縮すると 足は動かないので、片方を抑える ウ = 興奮させる エ = 抑制する 【オ 所要時間】 ① 感覚神経の伝導(Q–R–S) 60 cm = 0.60 m 0.60 ÷ 10 = 0.060 秒 = 60 ミリ秒 ② 脊髄内のシナプス(S–T) 1 ミリ秒 ③ 運動神経の伝導(T–U) 50 cm = 0.50 m 0.50 ÷ 50 = 0.010 秒 = 10 ミリ秒 ④ 神経筋接合部(U と筋肉X) ここもシナプス 1 ミリ秒 合計 60 + 1 + 10 + 1 = 72 ミリ秒 オ = 72 よって ③ (神経筋接合部を数え忘れると 71 になり 選択肢に無いので気づける)
※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

