2020年度 大学入試センター試験 本試験 物理 解答・解説

2020年度 大学入試センター試験 本試験「物理」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。

目次
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解答

解説

2020年度 大学入試センター試験 本試験「物理」の解答・解説です(センター試験としては最後の年度)。第1問〜第4問が必答(25+20+20+20=85点)、第5問と第6問はどちらか1問を選択(15点)で、合計100点。
本記事では第5問・第6問の両方を解説していますので、選ばなかったほうの復習にも使ってください。設問ごとにアコーディオンを開くと、<問題要旨><考え方>と計算の流れが読めます。

第1問 小問集合(力のモーメント・磁力線・クインケ管・気体の状態変化・2次元の衝突)

力学・電磁気・波動・熱から1問ずつ。問5は「衝突前の全運動量が 0」に気づけば、衝突後も 0、つまり2球の運動量は必ず逆向きになると分かり、一瞬で決まります。

問1:正解 ③(配点5)

<問題要旨>
質量 M で長さ 3ℓ の一様な棒の端点A に軽い糸で物体をつなぎ、端点A から ℓ だけ離れた点O で棒をつるすと棒は水平に静止しました。物体の質量 m を求めます。

<考え方>
一様な棒なので重心は中央、つまり端点A から 1.5ℓ の位置にあります。支点O のまわりの力のモーメントのつり合いを立てるだけです。

一様な棒の重心は中央
 → 端点A から 1.5ℓ の位置

支点O は端点A から ℓ の位置
 → 重心は支点O から 1.5ℓ − ℓ = 0.5ℓ だけ
  物体と反対側にある

点O のまわりのモーメントのつり合い
 mg × ℓ = Mg × 0.5ℓ

 m = 0.5M = M/2
問2:正解 ①(配点5)

<問題要旨>
紙面に垂直で十分に長い直線導線A, B に、紙面の表から裏に向かって同じ大きさの電流を流したときの、紙面内の磁力線のようすを表す図を選びます。

<考え方>
直線電流の磁力線は導線を中心とする同心円。2本あるときは、近くでは各導線を囲む小さな円、遠くでは2本まとめて囲む大きな閉曲線になります。磁力線は必ず閉じた曲線で、途中で始まったり終わったりしません。

直線電流の磁力線
 → 導線を中心とする同心円(閉じた曲線)

同じ向きの電流が2本
 各導線の近く:それぞれを囲む小さな円
 2本の中間 :磁場が打ち消し合う点がある
 遠く    :2本をまとめて囲む大きな閉曲線

 → 小さな円と、それを外側から包む
  ひょうたん形〜楕円形の閉曲線 ①

(③ ④ のように導線から線が放射状に出る形は
  点電荷の電気力線であって磁力線ではない)
問3:正解 ④(配点5)

<問題要旨>
クインケ管で、経路ADC の長さを管D の出し入れで変えます。C で聞く音が最小になる状態から管D を L だけ引き出すと再び最小になりました(このとき経路ADC は 2L 長くなります)。音の波長 λ を求めます。

<考え方>
弱め合い(最小)から次の弱め合いまでの間に、経路差はちょうど波長 1 個ぶん変化します。管を L 引き出すと経路差は 2L 増えるので、それが λ に等しくなります。

最小(弱め合い)の条件
 経路差 =(半波長の奇数倍)

次に最小になるまでの経路差の変化
 = λ(波長ちょうど1個ぶん)

管D を L 引き出すと
 経路ADC は 2L 長くなる
 → 経路差の変化は 2L

 2L = λ

 λ = 2L

(途中で1回だけ大きくなるという記述とも整合する)
問4:正解 ③(配点5)

<問題要旨>
単原子分子理想気体について、(ア)絶対温度一定で圧力を 1/2 倍にするときの体積の倍率、(イ)圧力一定で絶対温度を 1/2 倍にするときの体積の倍率、(ウ)そのときの内部エネルギーの倍率を答えます。

<考え方>
状態方程式 pV = nRT の三つの量のうち、どれを一定にするかで比例・反比例が決まります。内部エネルギーは U = (3/2)nRT なので温度に比例します。

ア:温度一定(ボイルの法則)
 pV = 一定
 圧力が 1/2 倍 → 体積は 2 倍

イ:圧力一定(シャルルの法則)
 V/T = 一定
 温度が 1/2 倍 → 体積は 1/2 倍

ウ:単原子分子理想気体の内部エネルギー
 U = (3/2)nRT(温度だけで決まる)
 温度が 1/2 倍 → 内部エネルギーも 1/2 倍

 → ア = 2,イ = 1/2,ウ = 1/2
問5:正解 ④(配点5)

<問題要旨>
なめらかな水平面上を右向きに速さ v で運動する質量 2m の小球A が、逆向きに速さ 2v で運動する質量 m の小球B と点O で衝突しました。衝突後、小球A の速度の向きは 45° 変化しています。衝突後の小球B の速度の向きを選びます。

<考え方>
まず衝突前の全運動量を計算します。これが 0 なら、衝突後も全運動量は 0。つまり2球の運動量は必ず大きさが等しく逆向きになります。あとは A の向きの真逆を選ぶだけです。

衝突前の運動量(右向きを正)
 小球A:2m × v = 2mv
 小球B:m × (−2v) = −2mv

 合計 = 2mv − 2mv = 0

運動量保存より、衝突後の全運動量も 0
 → 小球A と 小球B の運動量は
  大きさが等しく、向きが真逆

図3 より、衝突後の小球A は
 右向きから 45° 下に傾いた向き(右下 45°)

 → 小球B はその真逆、左上 45° の向き ④

第2問 A 電磁気(円筒を切り分けたコンデンサー)

円筒を切り分けて誘電体をはさむと、切れ目の数だけコンデンサーができます。「どの導体とどの導体の間にコンデンサーがあるか」を書き出して回路図に直すのが勝負どころ。

問1:正解 ④(配点5)

<問題要旨>
円筒形の導体を等しい形状の導体 P, Q, R, S に切り離し、切れ目に誘電体をはさみました。導体P, R 間に電池をつないだ回路を、平行板コンデンサー4個の回路として表した図を選びます。

<考え方>
切れ目は P-Q、Q-R、R-S、S-P の4か所。つまり P → Q → R → S → P と一周する形に4個のコンデンサーが並びます。電池は P と R につながっているので、P から R へ行く道が2本あることになります。

切れ目(=コンデンサー)は4か所
 P-Q,Q-R,R-S,S-P
 → P → Q → R → S → P と一周する輪

電池は P と R の間

 P から R へ行く道は 2 本
 道1:P →(コンデンサー)→ Q →(コンデンサー)→ R
 道2:P →(コンデンサー)→ S →(コンデンサー)→ R

 各道は「2個直列」
 その2本が「並列」

 → 2個直列の枝を2本並列にした回路 ④
問2:正解 ②(配点5)

<問題要旨>
電池をはずしてすべての電荷を放電させた後、導体P, S 間に電池をつなぎました。十分に時間が経過した後の導体Q, R 間の電圧は電池の電圧の何倍かを答えます。

<考え方>
P と S の間には、直接つながるコンデンサー(P-S)と、Q, R を経由する3個直列の道があります。求める Q-R 間の電圧は、その3個直列のうちの真ん中1個ぶんです。

電池は P と S の間

 P から S へ行く道は 2 本
 道1:P →(P-S のコンデンサー)→ S … 1個
 道2:P → Q → R → S      … 3個直列

 道2 の3個は同じ電気容量で直列
 → 電圧は等しく 3 等分される

 電池の電圧を V とすると
 各コンデンサーの電圧は V/3

 Q-R 間のコンデンサーの電圧 = V/3

 → 1/3 倍

第2問 B 電磁気(加速された荷電粒子と磁場)

電場で加速してから磁場に打ち込む定番の設定。「磁気力は仕事をしない」と「エネルギーの式に質量がどう入るか」の2点で4問とも片づきます。

問3:正解 ⑤(配点5)

<問題要旨>
電極Q の穴を通過した荷電粒子A(電気量 q > 0)が、紙面の裏から表向きの一様な磁場の中を進みます。描く軌道(ア)と、面S に達する直前の運動エネルギーが電極Q 通過時と比べてどうか(イ)を答えます。

<考え方>
磁気力の向きは、速度の向きから磁場の向きへ右ねじを回した向き。速度は右向き、磁場は紙面の裏から表向きなので、力は下向きになります。また磁気力は速度に垂直なので仕事をしません。

ア:磁気力の向き
 速度 v は右向き(+x)
 磁場 B は紙面の裏から表向き
 正電荷にはたらく力は
 v から B へ回した右ねじの向き
 → 下向き

 → 下に曲がる軌道 (b)

イ:磁気力は常に速度と垂直
 → 仕事をしない
 → 運動エネルギーは変わらない

 → ア = (b),イ = 変わらない
問4:正解 ③(配点5)

<問題要旨>
電極P の穴を速さ v で通過した荷電粒子A が電極Q の穴を速さ 2v で通過しました。このときの電位 V(ウ)と、同じ V のもとで電気量 q・質量が m より大きい荷電粒子B が P を速さ v で通過したとき、Q での速さが 2v よりどうなるか(エ)を答えます。

<考え方>
電場がした仕事 qV が運動エネルギーの増加分に等しい、と書くだけ。エは、同じ仕事を受けても質量が大きいほど速さの増え方が小さくなる、という関係を式で確かめます。

ウ:仕事とエネルギーの関係
 qV = (1/2)m(2v)² − (1/2)mv²
   = (1/2)m(4v² − v²)
   = (3/2)mv²

 V = 3mv²/(2q)

エ:質量 M(> m)の粒子B について
 qV = (1/2)Mu² − (1/2)Mv²
 (3/2)mv² = (1/2)M(u² − v²)

 u² = v² + 3mv²/M
  = v²(1 + 3m/M)

 粒子A では M = m なので u² = 4v²(u = 2v)
 M > m のとき 3m/M < 3
 → u² < 4v² → u < 2v

 → 2v よりも小さい

第3問 A 波動(水面波のドップラー効果)

観測者が動く場合と、波源が動く場合を続けて考えます。問2は「先に出た波ほど遠くにある」「波源が動き出す前の波は波長 VT、動き出した後の波は縮む」を落ち着いて並べれば、波形の全長まで計算できます。

問1:正解 ③(配点5)

<問題要旨>
速さ V で x 軸の正の向きに進む波について、隣り合う山と山の距離(ア)と、x 軸の正の向きへ速さ v₀ で動く観測者が最初の山を観測してから次の山を観測するまでの時間 T₁(イ)を求めます。

<考え方>
波長は「速さ × 周期」。観測者が波と同じ向きに動くと、観測者から見た波の相対的な速さは V − v₀ になります。山から次の山まで進むのに必要な距離は波長のままです。

ア:波長 = 速さ × 周期
 λ = VT

イ:観測者は波と同じ向きに速さ v₀ で動く
 → 観測者から見た波の速さ(相対速度)
  V − v₀

 次の山が観測者に追いつくまでの時間
 T₁ = λ/(V − v₀)
  = VT/(V − v₀)

(観測される振動数は 1/T₁ = (V − v₀)/(VT)
  で、静止時の 1/T より小さくなる)
問2:正解 ②(配点5)

<問題要旨>
t = 0 から波を発生させ、t = 2T までは波源を固定、t = 2T からは x 軸の正の向きへ速さ V/4 で波源を動かします。波源の位置で t = 4T に発生した波が原点O に到達したときの波形を選びます。

<考え方>
波源が静止していた間に出た波は波長 VT のまま。波源が動き出した後に出た波は、波源が波を追いかけるぶんだけ縮んで波長 (V − V/4)T = (3/4)VT になります。原点O に近いほど「あとから出た波」なので、O 側が縮んだ波、遠い側がもとの波長になります。

図2 から読み取る基準
 波源が固定されていた 0 〜 2T に出た波は 2 波長ぶん
 波長 λ = VT

[波源が動き出した後(2T 〜 4T)]
 波源は速さ V/4 で波を追いかける
 1 周期のあいだに
  波は VT 進み、波源は (V/4)T 進む
 波長 λ' = VT − (V/4)T = (3/4)VT

[O に到達したときの波形]
 あとから出た波ほど O に近い

 O 側:λ' = (3/4)VT の波が 2 波長
     長さ 2 × (3/4)VT = 1.5VT
 その先:λ = VT の波が 2 波長
     長さ 2 × VT = 2VT

 波形の全長 = 1.5VT + 2VT = 3.5VT
 (図2 の全長 2VT の 1.75 倍)

 → O 側が詰まっていて外側ほど間隔が広く、
  全長が図2 の約1.75倍になっている ②

第3問 B 波動(ヤングの干渉実験とニュートンリング)

干渉のしま模様の間隔 Δx=λL/d と、ニュートンリングの条件式。問4は「反射での位相の反転が片側だけ起こる」ことに気づけるかどうかで決まります。

問3:正解 ⑥(配点5)

<問題要旨>
複スリットによる干渉で、赤の単色光と紫の単色光のうち隣り合う明線の間隔が狭いのはどちらか(ウ)、また S₁ と S₂ の間隔 d を狭くしたとき明線の間隔はどうなるか(エ)を答えます。

<考え方>
明線の間隔は Δx = λL/d。波長 λ に比例し、スリット間隔 d に反比例します。可視光では紫のほうが波長が短いことを使います。

明線の間隔
 Δx = λL/d
 (L はスリットからスクリーンまでの距離)

ウ:Δx は λ に比例
 可視光の波長は 紫 < 赤
 → 間隔が狭いのは紫

エ:Δx は d に反比例
 d を狭くする → Δx は大きくなる
 → 広くなる

 → ウ = 紫,エ = 広くなる
問4:正解 ⑦(配点5)

<問題要旨>
平凸レンズを平面ガラスにのせて上から波長 λ の単色光を当てるニュートンリングです。空気層の厚さ d の点で強め合う条件(オ)と、空気層を屈折率 n′(1 < n′ < n)の液体で満たしたときの最も内側の明環の半径の変化(カ)を答えます。

<考え方>
反射での位相の反転は「屈折率の小さい側から大きい側へ向かう反射」のときだけ起こります。ここではレンズ下面(ガラス→空気)では起こらず、平面ガラス上面(空気→ガラス)では起こる。片側だけなので、条件式に半波長ぶんのずれが入ります。

オ:位相の反転
 レンズ下面での反射:ガラス(n) → 空気(1)
  屈折率が小さくなる向き → 反転しない
 平面ガラス上面での反射:空気(1) → ガラス(n)
  屈折率が大きくなる向き → 反転する(π)

 片側だけ反転するので、強め合う条件は
 2d = (m + 1/2)λ (m は 0 以上の整数)

カ:液体(屈折率 n')で満たすと
 光路差は 2n'd になる
 2n'd = (m + 1/2)λ
 d = (m + 1/2)λ/(2n')
 → 同じ m に対する d は 1/n' 倍に小さくなる

 半径 r と d の関係(d は R に比べ十分小さい)
 d ≒ r²/(2R) → r = √(2Rd)

 d が小さくなる → r も小さくなる

 → オ = m + 1/2,カ = 小さくなる

第4問 A 力学(合体してから円筒面を一周する運動)

合体(運動量保存)→ 円運動(力学的エネルギー保存+最高点の条件)という二段構え。最高点で「重力だけで円運動できるぎりぎり」が最小条件です。

問1:正解 ①(配点5)

<問題要旨>
なめらかな床面上で、質量 m・速さ v の小物体A を静止していた質量 3m の小物体B に衝突させ、合体して質量 4m の小物体C になりました。合体直後の速さ V を求めます。

<考え方>
合体する衝突なので運動量保存を使います。力学的エネルギーは保存しません。

運動量保存
 mv + 3m × 0 = 4m × V

 mv = 4mV

 V = v/4
問2:正解 ③(配点5)

<問題要旨>
小物体C が半径 r のなめらかな円筒の内面に沿って最高点P を通過するために必要な V の最小値を求めます。

<考え方>
内面に沿った円運動では、最高点で「重力だけで向心力をまかなえる」のがぎりぎりの条件(垂直抗力が 0)。そこから力学的エネルギー保存で下の速さに戻します。

最高点P を通過できるぎりぎりの条件
 垂直抗力 N = 0 で、重力だけが向心力

 4mg = 4m v_P²/r
 v_P² = gr

力学的エネルギー保存(床を高さの基準)
 最高点P の高さは 2r

 (1/2)(4m)V² = (1/2)(4m)v_P² + 4mg × 2r
 V² = v_P² + 4gr
  = gr + 4gr = 5gr

 V = √(5gr)

第4問 B 力学(ばねでつないだ2球と、糸を放した直後)

「糸を放した直後、ばねの長さはまだ変わっていない」──この一点に尽きます。ばねの力は瞬時には変わらないので、下の球にはたらく力はつり合ったまま、上の球だけが一気に力を受けます。

問3:正解 ④(配点5)

<問題要旨>
質量 m の小球1, 2 をばね定数 k の軽いばねでつなぎ、小球1 に糸をつけて全体をつり下げて静止させました。ばねの自然の長さからの伸び s と、糸の張力 T を求めます。

<考え方>
小球2 だけに注目するとばねの力と重力のつり合いで s が出ます。糸の張力は全体(小球1+ばね+小球2)にはたらく重力を支えるので、2球ぶんです。

[小球2 について]
 上向きにばねの弾性力 ks、下向きに重力 mg
 ks = mg
 s = mg/k

[全体について]
 上向きに糸の張力 T
 下向きに重力 2mg(ばねは軽いので無視)
 T = 2mg

(小球1 だけで見ても
 T = mg + ks = mg + mg = 2mg で一致)
問4:正解 ④(配点5)

<問題要旨>
その後、糸を静かに放します。放した直後の小球1, 2 それぞれの加速度の大きさ a₁, a₂ を求めます。

<考え方>
糸を放した瞬間、ばねの長さはまだ変わっていないので、ばねの弾性力は ks = mg のままです。糸の張力だけが消えるので、その分を各球について考えます。

放した直後、ばねの伸びはまだ s = mg/k のまま
 → ばねの弾性力の大きさは ks = mg

[小球2]
 上向きにばねの弾性力 mg
 下向きに重力 mg
 → つり合ったまま、合力 0
 a₂ = 0

[小球1]
 下向きに重力 mg
 下向きにばねが引く力 ks = mg
 (ばねは伸びているので小球1 を下へ引く)
 糸の張力は消えている
 → 合力は下向きに 2mg

 m a₁ = 2mg
 a₁ = 2g

第5問〔選択問題〕 熱力学と浮力(浮き沈みする容器)

第5問と第6問はどちらか1問を選択します(配点15点)。こちらは浮力と気体の状態変化の複合。「浮力は気体の部分の体積で決まる」「気体の圧力は水面下の深さで決まる」を分けて考えるのがコツです。

問1:正解 ①(配点5)

<問題要旨>
上面が閉じ下面が開いた円筒容器(質量 m,断面積 S)が、上面が水面と接するように浮いています。容器内の水位が水槽の水面から ℓ₁ 下がっているとき、ℓ₁ を求めます。

<考え方>
水を押しのけているのは、容器内の気体が占める部分です。その体積は S×ℓ₁。浮力=押しのけた水の重さ、として容器の重さとつり合わせます。

押しのけた水の体積
 = 容器内の気体が占める体積
 = S × ℓ₁

浮力 = ρ × (Sℓ₁) × g

力のつり合い(容器は浮いて静止)
 ρSℓ₁g = mg

 ℓ₁ = m/(ρS)
問2:正解 ②(配点5)

<問題要旨>
水温を下げて容器が底まで沈み、その後水温を上げて容器が上昇を始めたときのようすです。容器が水槽の底面から受ける垂直抗力の大きさ N と、容器内の気体の圧力 p₂ を求めます。

<考え方>
「上昇を始めた」瞬間は、底から離れる直前=垂直抗力が 0 になった瞬間です。気体の圧力は、気体と水が接している面(容器内の水面)での水圧に等しく、その深さは水槽の水面から ℓ₂ です。

N について
 容器が上昇を始める瞬間=底から離れる瞬間
 → 垂直抗力 N = 0

p₂ について
 気体は容器内の水面で水と接している
 その面の深さは、水槽の水面から ℓ₂

 深さ ℓ₂ での水圧
 = p₀ + ρℓ₂g

 気体の圧力はこれに等しい
 p₂ = p₀ + ρℓ₂g
問3:正解 ③(配点5)

<問題要旨>
水槽に沈んでいる容器の中の気体の体積が図1 の場合より大きくなると容器は上昇を始めます。容器が上昇を始める直前の水温を求めます。

<考え方>
上昇を始めるのは「浮力=重力」になったとき。問1 より、そのときの気体の体積は図1 と同じ Sℓ₁ です。つまり体積が等しい二つの状態を比べればよく、ボイル・シャルルの法則で体積が約分されます。

上昇を始める条件は 浮力 = 重力
 → 気体の体積は図1 と同じ V = Sℓ₁

図1  :圧力 p₁,体積 Sℓ₁,温度 T₁
上昇直前:圧力 p₂,体積 Sℓ₁,温度 T₂

ボイル・シャルルの法則
 p₁ × Sℓ₁ / T₁ = p₂ × Sℓ₁ / T₂

 体積が約分されて
 p₁/T₁ = p₂/T₂

 T₂ = (p₂/p₁) T₁

第6問〔選択問題〕 原子(原子核と放射線)

第5問との選択問題(配点15点)。問1はニホニウム、問2は結合エネルギーの計算、問3は放射線の電場中での曲がり方。いずれも典型で、確実に取りたい大問です。

問1:正解 ⑧(配点5)

<問題要旨>
ニホニウム生成の核反応式 [ア]+ ²⁰⁹₈₃Bi → ²⁷⁸₁₁₃Nh + ¹₀n の空欄ア と、²⁷⁸₁₁₃Nh が ²⁵⁴₁₀₁Md になるまでの α 崩壊の回数(イ)を答えます。

<考え方>
核反応式は「質量数の和」と「原子番号の和」が両辺で等しくなります。α 崩壊は質量数 −4、原子番号 −2 なので、質量数の差から回数が決まります。

ア:核反応式で保存される量

 質量数:A + 209 = 278 + 1 = 279
     A = 70
 原子番号:Z + 83 = 113 + 0 = 113
      Z = 30(亜鉛 Zn)

 → ⁷⁰₃₀Zn

イ:²⁷⁸₁₁₃Nh → ²⁵⁴₁₀₁Md

 質量数の差 278 − 254 = 24
 α 崩壊1回で質量数は 4 減る
 24 ÷ 4 = 6 回

 (確認)原子番号 113 − 2×6 = 101 ✓
問2:正解 ⑤(配点5)

<問題要旨>
⁴₂He 原子核の結合エネルギーを求めます。陽子の質量 1.673×10⁻²⁷ kg、中性子の質量 1.675×10⁻²⁷ kg、⁴₂He 原子核の質量 6.645×10⁻²⁷ kg、光速 3.0×10⁸ m/s とします。

<考え方>
ばらばらの核子の質量の和から原子核の質量を引いた差(質量欠損)に c² を掛けます。引き算で桁がぐっと下がるので、有効数字の扱いに注意します。

ばらばらの核子の質量の和
 陽子2個:2 × 1.673×10⁻²⁷ = 3.346×10⁻²⁷
 中性子2個:2 × 1.675×10⁻²⁷ = 3.350×10⁻²⁷
 合計:6.696×10⁻²⁷ kg

質量欠損
 Δm = 6.696×10⁻²⁷ − 6.645×10⁻²⁷
   = 0.051×10⁻²⁷ = 5.1×10⁻²⁹ kg

結合エネルギー
 E = Δm c²
  = 5.1×10⁻²⁹ × (3.0×10⁸)²
  = 5.1×10⁻²⁹ × 9.0×10¹⁶
  = 4.59×10⁻¹²
  ≒ 4.6×10⁻¹² J
問3:正解 ⑥(配点5)

<問題要旨>
鉛容器から鉛直上向きに α 線、β 線(電子)、γ 線を出し、水平方向に電場をかけたときの、電場の向きと3種類の放射線の軌道を表す図を選びます。

<考え方>
α 線は正、β 線は負、γ 線は電気を帯びていません。したがって α と β は逆向きに曲がり、γ はまっすぐ進みます。さらに α 粒子は電子よりずっと重いので、曲がり方は小さくなります。

図の電場は左向き(⇐)

α 線:正の電荷(ヘリウム原子核)
 → 静電気力は電場と同じ向き = 左向き
 → 左に曲がる

β 線:負の電荷(電子)
 → 静電気力は電場と逆向き = 右向き
 → 右に曲がる

γ 線:電荷をもたない電磁波
 → 曲がらず、まっすぐ上へ

曲がりの大きさ
 α 粒子の質量は電子の約7300倍
 → 同じ大きさの力でも加速度が小さい
 → α の曲がりは β よりずっと小さい

 → 左に少し曲がる α、まっすぐな γ、
  右に大きく曲がる β ⑥

※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

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